MCカートリッジ ASKA-L レビュー(Stereo 2026年7月号)
-
音楽之友社が発行する「Stereo 2026年7月号」に掲載されたMCカートリッジASKA-Lのレビューをご紹介します。以下は音楽之友社の許可を受けて掲載しています。
-
話題の新製品を聴く - Stereo試聴室
1978年より続くDV-10Xシリーズなど、独自の理論に基づく技術や設計のMCカートリッジやトーンアームをラインアップするダイナベクター。その独自技術が手頃なコストで体験できるMCカートリッジの新しいエントリーモデルが本機。同社の特徴的な技術である、歪み感を抑え伸びやかな空間とレンジが得られるという最新の特殊焼鈍磁気回路をはじめ、強力なネオジムマグネットを採用しながらもそのマグネットが持つうるささや歪みを低減するという「ソフト化マグネット」や磁気回路の磁束変動を緩和し自然な音色を実現したという「フラックスダンパー」などの特許技術が本機にも搭載されている。自重5.8g、標準針圧2gと使いやすい。一般的なMC型出力のLタイプを試聴したが、MM型並の出力(2.8mV)のHタイプもある。
-
落ち着きよく伸びやかな傾向
歪みを抑える特殊焼鈍を施した純鉄磁気回路や、ネオジム磁石の歪みや音の粗さを消すソフト化マグネット技術を用いた、ダイナベクターのエントリーMCカートリッジ。カンチレバーはアルミ製、針先は楕円形状だ。落ち着きよく伸びやかなサウンド傾向で、ヴォーカルの口元はしっとりとしてしなやかに動く。オーケストラの旋律は密度よく滑らかで、金管パートのコシも太く安定的なハーモニーを実感できる。弦楽器の際立ちも潤いがあり、胴の響きの豊かさもしっかりと描き出す。声の自然な厚み、肉付き感だけでなく、ピアノやシンバルの響きの重厚さも感じられ、低重心でストレスがない。低域方向の響きは穏やかな傾向だが、中低域の弾力感は腰の据わった独特な存在感を放つ。(岩井喬:8)
-
音楽を心地よく描き出し聴きやすい
優れたトーンバランスと描写力を備えたMCカートリッジである。高域方向は穏やかに整えられており、旋律帯域が自然なプレゼンスを伴って浮かび上がる。そのため、ヴォーカルやリード楽器が前に出ながらも全体のまとまりを損なわず、音楽を心地よく描き出す聴きやすいサウンドが実現されている。とりわけロックミュージックでは、ヴォーカルを耳当たりよく再現するとともに、ドラムスのタムやスネアのヒット、リードギターも温かみを保ちながら豊かな存在感で表現する様が心地よかった。全体として、際立った個性で聴き手をひきつけるタイプのカートリッジではないが、その分ジャンルを選ばず、多様なコンポーネントとも組み合わせしやすい懐の深さを備えている。(生形三郎:8)
-
中低域に厚みのあるナチュラルな音
同社の高出力と低出力特性を備えるMCカートリッジとは、じつにユニークな技術である。フォノイコのMCポジションで使う一般的なMC、またMMポジションで使える高出力MCとして機能する仕様だ。同社独自の特殊焼鈍磁気回路を搭載し、針先は扱いやすい楕円針である。MM対応フォノイコでMC再生する優位性は、一般的にMCフォノイコよりも高S/Nで再生できることである。一方で、MCポジションでは、ゲインや負荷抵抗を試しながら、好みの音で楽しめる。その本機の基本の音は、高解像度で音像を空間描写し中低域に厚みのある、ややピラミッドバランスのナチュラルな音を再生する事が特徴である。弱音再現性も高く、繊細さや柔らかさもよく再生する。倍音も豊かだ。(角田郁雄:8)
-
優れた帯域バランス、密度の高い音色
ダイナベクターのMCカートリッジではエントリーに位置付けられる製品だが、再生音を確認すると、優れた帯域バランスや密度の高い音色など、上記機種の設計思想を受け継いでいることに気付く。オーケストラは低弦や打楽器の一音一音に芯があり、管楽器の濃密な音色との相乗効果で密度の高いサウンドを引き出す。弦楽器の高音に不自然な硬さや過度な鋭さがなく、他の楽器と滑らかに溶け合うことも長所のひとつだ。すっきりとした抜けのよい音というより、コクのある濃い音と形容したくなるが、女性ヴォーカルのウォームな感触や、僅かにイメージが広がり気味の声が落ち着きを引き出す面もあり、レコードの音にリラックス効果を求める音楽ファンにも向く。(山之内正:8)
-
「話題の新製品を聴く」の取材方法は、ジャンルごとに4名の担当テスターが同時に試聴を行ない、10点法で採点しています。 6点は「水準の製品」、7点は「水準以上の製品」、8点は「優れている製品」、9点は「非常に優れている製品」。 採点はすべて価格を考慮した対価格評価方式で、デザインや機能性、使用感などのユーザビリティも考慮した評価です。
-
【リファレンス機材リスト】
レコードプレーヤー:テクニクス SL-1000R
フォノイコライザー:アキュフェーズ C-57
コントロールアンプ:アキュフェーズ C-3900S
パワーアンプ:アキュフェーズ A-300、同P-7500、同A-80
スピーカーシステム:フォステクス RS-2 with NW-3、同G2000a
-
Copyright (C) 音楽之友社 July 2026
-
本ページは音楽之友社の承認のもとにReview記事の内容を文書化したものです。許可なく内容の複製および転載を禁じます。
