原音再生の呪縛とスーパーステレオ
ステレオの呪縛

 辞書によると"呪縛"とは"まじないを掛けて動けなくすること"とある。音響再生の歴史約100年を通じて錦の御旗は原音再生、伝達関数1であり、この究極を目指した無数の研究、開発、製品化が発表され、デジタル化によりオーディオ技術はもはや究極に達したと言って良かろう。

 一方、ユーザー側からみて原音再生成功は福を齎したか? オーディオマニアやファッションとしてのオーディオユーザーを別として、大半のオーディオユーザーは手元に積み上がったレコード、CD、カセット等の山を見て途方に暮れている、と言ってもよい。殊に一生レコードを趣味としてきた熟年ユーザーにとっては深刻である。山のようなコレクション、原音再生を信じて投資したステレオは、ローテク遺物としてハイテクオーディオの対象外、もはやハイテクメーカーのマーケットから消えてしまった。原音再生成功し、音楽愛好家は去るの図である。

 ここでレコード産業とは何かを考えてみよう。エジソンの蓄音機の目的は音の記録再生であったが、実際の製品は音楽の再生が主な目的であり、飽くまでレコードが主で蓄音機は従である。またレコードは当時の貴重な演奏を記録、ユーザーは繰り返しその演奏を楽しむ、即ち芸術の保存も重要な役目と言える。
 芸術の内、書画工芸の数千年の歴史は大切に保存され、いつまでもその真の姿に接することができる。一方音楽芸術は物質的なものがなく、唯1回限りであり、その姿は不完全ながらレコードに刻まれた。エジソン以来、レコードに残された貴重な演奏は美術品同様人類の文化遺産である。不完全とはいえ、この遺産は膨大である。不完全で好ましくない、使いづらい、ローテクだ等の理由でこの貴重な文化遺産は、遂にゴミとして捨てられ始めている。

 オーディオ技術には最先端を追求する以外、音楽文化の保全という他の技術と異なる社会的、文化的義務があることを忘れるべきではない。オーディオ技術、業界の現状に関する限り真にお寒い感じを免れない。

 ダイナベクターはこのような暗黒面に挑戦することにより、取り残されたユーザー、過去の遺産の復元を期し、或る程度成功したことを確信するに至った。それがスーパーステレオ(SuperStereo)の完成である。スーパーステレオは原音再生の呪縛を歴史上初めて破り、その新しい世界は多くのユーザーに改めて大きな喜びを齎した。すなわち、古今全てのレコードはその質に関わらず、音楽の命が再び与えられたのである。

スーパーステレオ(SS)とは?

 オーディオの新しい流れはマルチメディアとの合流である。パソコンは今やあらゆるメディアに接続され、デジタル家電の中心になった。オディオ技術はマルチメディアの一部としての多機能化に変質した。貴重な音楽遺産は無視されるばかりである。 一方、手元のレコードからもっと音楽を楽しみたいユーザーの数やマーケットは膨大である。原音再生信仰は一部マニアのものではあっても、遂に大衆の期待を満たすことができなかった。では大衆のオーディオに求めるものとは何であろうか。

常識的な価格と小さなサイズと誰にも許容できる簡単な操作性、それにもっと決定的なことは、ユーザーの持っているあらゆる種類の音楽ソース(SPからDVDまで)が全て満足できる程度に再生されることである。 

こんなことが本当にできるのか? それは臨場感の再生、又は創生である。

 10年間以上のSS研究で分かったことは、臨場感の乏しいHi-Fi再生は大衆に全くアピールしない。たとえ貧弱なステレオでもスーパーステレオ化によって十分な臨場感を付加すると、彼等は手もなく感動することである。古いモノラルを使ってさえこれは変わらない。臨場感の追及は、原音再生主義に決定的に欠けていたことである。2本のスピーカー付き電話というステレオ形態のみでは、臨場感はどうすることもできないことにもっと早く学問的にも解析すべきであったのである。

 10年に亘るSSの研究、開発にあたっての実験的、解析的な試みの結果、臨場感は "唸り"Beatと強い関係があるらしいことが明かになり、その結論に沿って無数の改良、試作の末現在ほぼ満足できるまでになった。この結果、大昔のSPレコードを通しても当時の演奏が音としてではなく、音楽として再生することも可能となった。また、モノラル録音もステレオのように再生できるのは意外な事実である。このような事実を前にして、現在のオーディオの主流を成す考え方は次のような諸点を考慮すべきである。

 現在、オーディオの理論は殆ど全て振動学に拠っている。F特、位相、歪みである。正弦波入力による応答特性で全て理解できるのが振動学である。いわゆるフーリエ、ラプラス(Fourier、Laplace)の世界である。これに対してSSでは次のような考えが元になっている。即ち、"複数の周波数の異なる正弦波が同時に空間に放出されたとき、重ね合わせの原理がいつも成立するのか。言い換えればFourierは役に立つのか。"

 単一正弦波によるテスト結果だけで、その空間の特性が分かるのか。よく見られるリスニング・ルームの測定に対する問題提起である。 2つの異なる周波数の音波は必ず"唸り"Beatを発生する。Beatには2種類ある。
 Non-Dispersive BeatとDispersive Beat。従来音響の常識として音速は周波数によらず、340m/secであるから、BeatはNon-Dispersiveだから重ね合わせ原理が成立する。即ち、オーディオ周波数域では音響空間は非分散間である、というのが常識であった。 これに対して次の2つの理由で音響空間は分散空間であると考え、SSを追及し、所期の目的に近づくことができた。即ち、臨場感の創生、再生である。

  臨場感という言葉の定義については、あまりはっきりしたものが無いようだ。ある現象の定義は本来、物理学的解析に基づく説明を伴わなければならない。SSにおいていう臨場感とはレコード(広い意味)再生にあたり、リスナーが原コンサート空間に居るような感じを指すことにする。

 このような定義によると、再生音の臨場感と空間の分散 媒質性に強い関係があることが分かった。SSの機能はリスニング空間の分散性をコントロールすることにある。このコントロールの度合いにより、リスナーの感じる臨場感がそれにほぼ比例しているからだ。

 SSにおいては分散のコントロールは、実は補助スピーカーによってリスニング空間の唸りの発生をコントロールしている。ということは、ノーマル・ステレオの音に適当な"唸り"を与えるのである。

結論として臨場感は、リスニング空間の唸り成分の状態と強い相関がある。原演奏空間の持つ分散性、即ち"唸り"の状態と同等の分散性をリスニング・ルームが持つならば、リスニング空間で原空間を再現できる。原空間とリスニング空間はそのままでは全く違うから、これをできるだけ近付けるよう、電気回路と補助スピーカーで実現しようとするのがSSの姿である。

音とは?群遅延、群速度、位相速度、唸りの関係

 SSはどのような物理現象に基くのであろうか。それには我々が普段聴く音とは何かをより詳しく分析することから始まる。自然空間や無響室で聴く音と、コンサート・ホール、スタジオ等で聴く音は、毎秒340メートルの音速を持つ同じ性質の現象と考えてもいいのか、という問題である。

 少し詳しい物理学の教科書の波動論には、次のような波動伝搬の理論が述べられている。周波数f1、f2の異なる波がぶつかると、1/2 (f1+f2)という波が(f1−f2)、即ち2つ波の周波数の差で変調されたような波となり、1/2(f1+f2)の周波数の持続音が(f1−f2)という低い周波数で強くなったり、弱くなったりする。即ち(f1−f2)で唸る。これが唸り(beat)である。

 SSはこの唸りに注目。音の唸りには2種類あることに気付き、これを元に開発が行われた。それではこの2種類はどうなっているかを説明しよう。 詳しい数式は抜きにして、2種類の音の唸りを説明する。

無限空間や無響室のような環境では、音速は340m/sec一定と考えられる。このとき、2つの近接した周波数の音の唸り現象の図は、図1のように唸りの山の右方向への進行速度は、中心周波数成分のそれと同じであり、唸り全体の波形は同じ波形を保ちつつ時間と共に右の方に移動するだけである。

非分散媒質での音の伝播

室の中での唸りは図1の場合と同じと考えてよいか。

 ここで或る空間の音響特性の計算結果を示そう(松本豊作氏のデータ)。図2に空間の一点に音源を置いたとき、他の或る一点における周波数応答を示す。

或る空間の音響特性の計算結果 

 図2では振幅、位相の周波数特性が示され、最下部に群遅延特性が示されている。群遅延は位相を周波数で微分したもので、時間のディメンジョン(次元)を持つ量である。

 物理現象で説明すると、周波数特性上でのピークとディップ(共振点と反共振点)の近くの周波数領域では、周波数によってその成分が遅れたり、早まったりすると考えられる。即ちこの領域では音速が乱れ、340m/secの前後の値となる。即ち波動空間の媒質が周波数で異なると考えられる。
 このような周波数域に含まれる複数の波による唸りは図1.の場合と様相が異なる。 図で示すと図3のようになる。

分散媒質での音の伝播

 図3と図1をよく見ると、唸りの原因である中心周波数の強弱の山の移動に差があることである。図1では群(むれ)の移動と中心周波数成分の移動の間には相対的変化は無く、波動全体が図1のa、bのように時間と共に平行移動するだけであることが分かる。

 これに対して図3では図3a、bを見れば、群の頂点の移動と中心周波数成分の移動が相対的に異なることが分かる。即ち、群の移動速度と中心周波数成分の移動速度が異なるのである。前者を唸りの群速度、後者を位相速度と呼び、音の場合位相速度はいわゆる音速で340m/sec一定である。図1の場合群速度と位相速度は等しく、このような空間を非分散媒質と呼び、図3のような空間を分散媒質と呼び、この現象を分散という。

 図2を見れば分かるように、閉じた空間ではその周波数特性において群遅延を生ずる周波数帯域が数多く存在する。このことは部屋の中では周波数に応じて媒質(空気)が非分散媒質になったり、分散媒質になったりしていると考えられる。

自然界に存在する音、殊に音楽においては音楽を構成する多くの基本と共に、その基音と少しずれた音が同時に存在する。これが唸りを発生させる。部屋の形により縦、横、高さ方向に応じて無数の群遅延が発生し、実際には空間的にも、周波数的にも分散媒質化が非常に複雑な形で存在していると考えられる。

以上を要約すれば、我々が聴く音はいつも多かれ少なかれ唸りを伴うので、それが閉じた空間であるならば、音は必ず分散していると考えなければならない。SSの基本原理はこのことに基いている。

SSはノーマルステレオと、どう違うのか?

 現在までの音響再生の姿はエジソン以来音圧を記録し、その記録をスピーカーで再び音圧にするという形である。現在のアナログ、デジタル技術の進歩にも関わらず、この基本形は変わらない。マイクロフォンで音楽を録音し、増幅してスピーカーで再生するのである。このときスピーカーから放出されるのは、どのような性質を持つ音かを考えてみよう。

 閉じられた空間、例えばコンサート・ホールの空間は前にも説明したように、非分散媒質と同時に強い分散媒質と考えられる。色々な楽器から出る楽音は大量な唸りを伴い、この唸りは分散媒質によりその群速度は千差万別である。リスニング・ルームで音楽を再生するときも、リスニング・ポイントにおいてもコンサート・ホールのマイク・ポイントでの音の分散が同じでなければならない。即ち、スピーカーからリスニング・ポイントに到達する音は、コンサート・ホールのマイク・ポイントにおける音の持つ群速度の様子と同じ群速度状態を持っていなければならない。

 このことは非常に大切な事柄であるので注意深く読んで頂きたい。

 マイクロフォンは一点における音圧・変化に反応するだけである。一方コンサート・ホール等では唸り成分(波束)の速度、即ち群速度と基音の速度、即ち位相速度が異なっている。この2つの状態の音を速度に関係無く、一瞬一瞬の音を電圧・変換しているのがマイクロフォンである。この信号を増幅して、スピーカーが振動し音に変換される。

 スピーカーに入力される信号は強弱のみの時間信号で、原空間の群速度と位相速度が区別されて放出されるわけではない。スピーカーはマイクロフォンの信号と相似の波形の振動をするのみで、リスナーがそのスピーカーの音を聴くとき、その音はスピーカーとリスニング・ルームの関係で存在する分散性に100%支配された音を聴くだけで、原空間の分散性はそこには再現されていないので、原音楽をコンサート・ホールで聴く音楽と大分異なった音楽を聴いていることになる。

 普通家庭でのリスニング・ルームはコンサート・ホールに比べてサイズも小さく、リスナーとスピーカーの距離も小さいので、分散媒質の性質はコンサート・ホールよりかなり弱い。従ってホームオーディオの音は分散性が弱く、その音の成分は位相速度成分が殆どである。

コンサート・ホールでの音は多量の群速度成分を持っているが、それがリスニング・ルームでは殆ど位相成分のみと化してしまうため、再生音楽特有の音となり、通常生の音楽に接している人達がオーディオに興味を持たない原因と考えられる。このことは、マイクロフォンからスピーカーまでのコンポーネントを如何に高度なものにしても全く関係の無いことである。

 自然空間や無響室でハイテク・コンポーネントで録音再生するときに限って原音は再生されることは証明されるが、一般の音楽再生を志向するユーザーにとっては問題であり、現在の大衆のオーディオ離れもこれが原因である。"原音再生の呪縛"といういわれである。

 ここで多分次のような疑問が起こるであろう。

 それは群速度と位相速度が同じか、違うかによって実際の聴こえ方に差があるのか、という問題である。SSにおいては次のように解釈しており、実際SSの再生音を聴く限り、この解釈が成り立っていると考える。

 それは音響エネルギーの伝搬を考えると理解できる。音響エネルギーは、音の振幅の2乗に比例している。非分散媒質では唸りの群(波束)エネルギーは、位相速度と同じ速度で移動する。一方、分散媒質では唸りの群のエネルギーの移動速度は群速度で、位相速度と同じではない。

 前にも述べたように、室内空間は分散と非分散の性質が周波数に応じて複雑に共存するから、音速で到達する音響エネルギーと音速以外で到達するエネルギーが存在する。
 音楽を構成する波動においては広い周波数帯域で無数の唸りが存在し、その唸りの波束エネルギーは340m/secの音速とそれ以外の幅を持った速度でリスナーに到達する。言い換えれば、コンサート・ホール等では全ての音楽情報がリスナーに同時に到達するわけではない。これに反して自由空間や無響室では、音速340m/secで同時に到達する。

 マイクロフォンでの波形を伝達関数1で空間に再生することをもって原音再生というならば、普通のリスニング・ルームでは理論的に不可能である。例外は小編成の音楽をごく近くで聴くとき、その音はほぼ非分散と考えられるからHi-Fiステレオでほぼ完全に再生できる。クラシック等ホールの影響を受ける音楽は、その空間の分散の状況で印象は大きく変わる。このような音楽の再生をするには、録音波形を忠実に再生するだけでは不十分であり、原空間と似たような形でリスニング・ルームを分散媒質化する必要がある。

 筆者の経験ではクラシック音楽の演奏を聴くとき、ホール、席によって印象が非常に違うもので、これは常識でもある。これは演奏の良し悪しは除き、ホールでのリスニング・ポイントの分散性が原因であると考えられる。従って、ホールの性質も分散性で説明できるのではないか。

 以上説明してきたようにステレオ装置で音楽を再生しても、リスニング・ルームにおける群速度と位相速度の関係は、原音楽空間(コンサート・ホール等)のそれとは大変異なる。スーパーステレオはノーマルステレオのみによる位相速度主体のリスニング・ルームの分散特性を、対向して置かれた補助スピーカーをスーパーステレオプロセッサーでドライブし、ノーマルステレオの音と衝突させることにより豊富な郡速度成分をリスニング・ルーム内に創生し、リスニング・ルームの分散特性を原空間のそれに似たように調節する。

このようにスーパーステレオは既存のノーマルステレオに何ら手を加えることなく、リスニング・ルームをコンサート・ホールに似た状態にするもので、グラフィック・イコライザー等によるステレオ信号調整により聴感を改善する、という考え方とは全く違うものである。スーパーステレオの目的はリスニング・ルームの媒質としての性質をより分散化するもので、一般のステレオがオーディオ信号の忠実再生を目的とするのとは違って、原空間の臨場感の再生を可能とし、原音楽そのままの生き生きとした音楽をリスニング・ルームで楽しむことを目的としている

スーパーステレオの構成

今まで説明してきたことから次のことが言える。

 現在までオーディオ技術、殊にステレオ再生では音楽ソース(LP、CD、DVD等)の高密度化、アンプの高性能化、Hi-Fiスピーカーの高度化に全力を上げてきた。音楽性とか臨場感は各コンポーネントの個性として受け止められ、深く追求されてきたわけではない。ステレオのユーザー側ではグラフィック・エコライザーやマルチ・チャンネル・スピーカー等によって、リスニング・ポイントでのF特のフラット化が論ぜられ、リスニング・ルームもそれを実現するために手を加えられてきた。近接録音、近接聴取に限れば、この考えは正しいことはここでしばしば説明してきた通りである。

 問題は大多数の音楽ファンがステレオに求めるのは、例えばカラヤン、ベルリンフィル、ベルリンフィルハーモニー・ホール、ワルター、ウィーンフィル、ウィーン音楽協会ホール等の再生であろう。このような場合音源はあらゆる唸りに満ち溢れ、ホール空間は強度の分散媒質と考えられる。従って、客席で聴く音は極めて重層的な複雑な性質を持ち、もはやフーリエ解析のみでは説明できず、それに基いて設計されたコンポーネントのみではこの音の再生は不可能である。

 スーパーステレオはこのことを理解した上で、ノーマルステレオの発生する位相速度主体の音にある種の性質を持つ位相速度の音を補助スピーカーで発生させ、ノーマルステレオの音にぶつけることにより、多量な群速度成分を創生することに成功したものである。 その原理のブロック線図を図4に示す。

SS原理のブロック線図

 パワーアンプPA-1とフロントスピーカーSPfがノーマルステレオである。パワーアンプ入力信号を関数発生器Gに入力する。関数発生器(プログラム可変)Gは複数の周波数帯域に応じた適当な関数を発生し、それを適当な重みを付けて合算し、その出力でリアスピーカーSPrを駆動する。フロント、リアスピーカーは対向の位置(必ずしも同軸上ではない)にセットすると、リスニング・ルーム内で多量な群速度成分が発生する。f1、f2…の形は可変で室内の分散をコントロールすることができる。これによって各レコードの録音状態に合わせて最適なコントロールができる。

 原音楽空間の持つ分散状態と全く同じものを再現するのが理想であるが、これは理論的に全く不可能である。しかしスーパーステレオで各周波数帯で適当な分散を発生させてやると、あたかもコンサート・ホールで聴く状態で音楽を楽しむことができる。そして分散を複雑な形にするほど、この感じが増大することも分かった。 

その特徴として、次の10点が挙げられる。

現存する全ての音楽記録に対応する。古いSP、モノラルLP等も現代に通用する高いレベルで音楽として再生できる。個人所有のレコード・ライブラリーは全て楽しめるようになる。

リスニング・ルームの大小や音響特性等に殆ど影響されない。野外においてもその性能は変わらない。

リスニング・エリアが広く、リスニング・ポイントは中央とは限らない。

装置のサイズは小型で、住環境を損なわない。
既存のステレオをそのままにしてスーパーステレオ化ができる。また、既存のステレオのグレードに余り左右されず、音楽が楽しめる。

低価格の基本構成から追加方式で、高レベルの全周波数帯域SSに拡張できる。
非常に小さなスピーカーでも自然で豊かなバス領域が再生されるので、サブ・ウーファー等は不要である。

ノーマルステレオに比べて、音楽の微細な構成まで自然な形で再現される。このことはオーケストラ等の優劣がはっきりとするので、興味が増す。

音量を上げてもうるささが無く、小音量でも自然な臨場感は失われない。長時間でも違和感が無く疲れない。

アナログレコードの良さが再認識される。

これらの特徴はノーマルステレオに無いものであり、プロ・オーディオ等にも新しい展開が期待される。

オーディオの将来に望むもの

 以上何度も述べたようにオーディオ、殊にステレオ再生の主な目的が音楽であれば、音楽の電気信号波形の忠実な再生のみでは目的達成は困難であることが分かる。これが実際に音楽に携わる人達がステレオを軽視、無視する原因であろう。しかし、この現状を放置すれば音楽に関する限り、貴重な人類文化遺産は再生不可能、または極めてプアーな形で放置されるだけで、遠からず消滅しかねない。

 一方、他の古代からの文化遺産の保全、再現は全力を上げて行われている。何故音楽だけが放置されているのか。オーディオ技術のこの面での貢献は、残念乍ら十分とはいえない。せいぜいデジタル・リミックスと称してCDに遺すのみである。このような形ではユーザーとしては、ステレオを通してその価値のほんの一部のみしか理解できない。

 このことはすでに行き詰まったオーディオにとって、大きなチャレンジとして絶好の機会とすべきものといえる。理想的には、如何なる貧困な音楽ソースからでも現在のユーザーの要求を満たせる程度に修復し、再生保存を可能とする技術の開発である。即ち、人類文化への貢献である。

 この技術は残念乍らマルチメディアとの新和性や、ハイテク一点張りの現在のトレンドとは異なり、全く別なものである。しかし、この目的が一度成功すると全世界の音楽ファンは狂喜し、忘れられた膨大なマーケットが復活するであろう。

 ここで筆者が不思議に思ってきたことを付け加えると、それは現在の音楽家達でさえ何故彼等の先輩たる名人、巨匠の偉業の保存、復活に無関心なのかである。音楽文化財に対する音楽界、オーディオ業界の冷淡さ、そのコマーシャリズムは修正されるべきである。そのため最も大切なこととしては原音再生の呪縛を解き、原音楽再生へとステレオの向きを変えることである。そのためにはデジタル信号処理万能のアプローチに対する反省が必要である。音楽の再生は思ったよりはるかに難しい問題であり、これを解決するためにはもっと多くの高度な物理学者と音楽家の協力が望まれる。

 スーパーステレオは以上のような明確な目的を持って研究開発され、その目的は部分的に達成された。スーパーステレオはハイファイの一環として存在するものではなく、広く音楽ファンの満足を追求した製品である。このことを御理解の上、是非一度御試聴して頂ければ幸いです。

 ダイナベクターはスーパーステレオに関して、全世界的なビジネス・ネットワーク(研究、開発、製造、マーケティング等)構築のため、協力を求めております。御関心のある向きは御相談下さい。

付記) ここで音速340m/sec一定としているが、低い周波数において,空気圧変動は等温変化として考えると、音速は260m/secとなるという報告もある。これによって低周波数では音は分散媒質の波動と考えられる。

ダイナベクター株式会社
富成 襄


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