平本邸HSS試聴記

マルチアンプシステム
 平本邸のシステムはTADのドライバーを使用したホーンと同じくTADのウーファーにフォステクスのホーンツイーターを組み合わせた3Wayマルチアンプシステムです。しかし、ホーンシステムにありがちなホーンの暴れやユニット間の繋がりの悪さは微塵もなく、低音は深々として、しかも軽やかに、ホーンは繊細に鳴っています。
 この理由は、各ユニットの振動版の位置の調整など位相合わせを徹底したこと、および金田式アンプの駆動力の良さに由来すると思われます。また、クロスオーバーは6dBとのことです。一般にはユニット間の音のかぶりを避ける意味から12dBや18dBを好むマニアが多い中で、位相の狂いの少ない6dBを選択したとのことです。クロスオーバーが6dBであるにも拘らず、ユニット間の音のかぶりがほとんど気にならないのが不思議なところです。

HSS
  上記のマルチアンプシステムの徹底的な追い込みの上にHSSを構築されていますが、ダイナベクターのオリジナルな方式に対してフロントスピーカーを加えたこと以外に、リアとサイドのスピーカーをリスナーの位置に向けていることが特徴です。
 そして、これらのレベルは、メインに比べて意外にも相対的に強く出してはいますが、プリセットの位置は低く抑え、スーパーステレオを強く聴かせたときの不自然な響きはありません。メインの音像はあくまでクリアーで、これに自然な響きが乗っています。

アクセサリーとルームチューニング
 驚いたことに、今時はやりのアクセサリーやルームチューニングの類は一切なく、アンプやプレーヤーも自作のラックに直置きで、高価な配線類も一切ありません。但し、ホーンの後方に、吸音材を詰めた枕状のものが設置され、低音のよどみやホーン後方への音の回り込みを防いでいるように思えます。
 TADのウーファーの深々としてクリアーで、しかも軽々と出るぼやけのない低音の出方を考えるとき、インシュレーターも一切使っていないことは、ちょっと不思議なところがあります。金田アンプの駆動力の良さと同時に、やたらにユニットや箱を響かせるのではなく、HSSによる部屋全体の音場そのもののなかで、低音が響いていることによるのかも知れません。

ソース毎の印象
 マランツのSA-11S1でプレイバックしたCDもSACDも、どちらかというとディジタル録音技術を駆使した最近の録音より、昔の真面目なアナログ録音でホール全体の響きを捉えた録音のものの方がしっくり来て、ホールの再現を感じさせます。特に、マーラーやブルックナーの大編成もので、絃のトレモロの弱音から、総奏までのダイナミックレンジの追随や、個々の楽器の位置関係と楽器の固有の響きと位置に対応したホールトーンの出方が見事といえます。
 少し型番は古いものの評判の良いマランツのユニバーサルプレーヤーDV8400でDVDも聴かせていただきましたが、CDに及びません。これは、マランツのSA-11S1との違いであることが、同じCDをかけることで分かりました。

 解像力は図抜けているが、やや神経質になりがちな金田式アンプと豊かで音楽性に富んだマランツのSA-11S1の相性が良いように感じました。

今後の再調整
 平本邸のHSSを参考にして今後の自宅のシステムの再調整をどうするかということですが、まず、スピーカーのセッティングとHSSのレベル合わせの見直しです。
 次に、調整用ソースの選択ですが、やはり録音の優れた大編成のマーラーやブルックナーのソースを活用することが必要ではないかと考えています。ともかく平本邸のHSSは大いに参考になりました。

 

レポート:越の聴楽酒仙坊


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