カー用パワーアンプの話

ハイカレント・パワーアンプについて
■ 背景と特徴
 ここ数年、1Ω負荷あるいは0.5Ω負荷で使用できるハイカレント・パワーアンプが、各社より発売されています。これは一つにはIASCA等におけるアンプのクラス別SPLコンテストによる影響が大きく、一台のアンプで複数個のスピーカーを駆動する能力が必要とされるためです。

 スピーカーの公称インピーダンスは4Ω、6Ω、8Ω、16Ωから選定されることが多く、ホームオーディオでは、8Ω(国内の小型スピーカーは現在6Ωのものが多い)が標準でカーオーディオでは4Ωが標準です。16Ωのものは現在はほとんどありませんが真空管アンプ時代の古いスピーカーの多くはこの値を選定していました。この値は半導体トランジスターアンプの能力アップとも関係して、回路設計技術の進歩とともに低負荷インピーダンス駆動が可能になったともいえます。

 低負荷インピーダンス駆動はアンプにとっては非常に過酷な条件で、下記に述べますようにアンプにとってはあまりメリットのある使用方法ではありません。しかしながら低負荷インピーダンスにおける安定動作を保証すると言うことは、そのアンプの電源供給能力と冷却能力が強力且つ優れていると言う、アンプの素性を判断する上で一つの目安にはなります。

 アンプにとって1Ωという低いインピーダンスで使用する場合どのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

  • メリット

    なんといっても4Ω負荷の時に比べて、2倍以上(理論的には4倍)のパワーが取り出せることでしょう。また一台のアンプでスピーカーを複数個パラレル駆動することができるので、シンプルで低コストのシステムが構成できます。
    回路設計上は、低い電源電圧で大出力を得られるので、耐圧の低いパーツが使用できます。
     

  • デメリット

    (1)ダンピングファクターの低下(DF)

    (2)4Ωで同出力時に比べて、2倍の電流が流れるのでスピーカケーブルには断面積が2倍のものが必要。

    (3)スピーカーターミナルなどの接触抵抗値が大きく影響する。

    (4)パワーアンプのノイズ出力電圧は負荷の大小で余り変化しないため、ノイズ出力が4倍に増加する。

    (5)回路設計上は、ドライバー段の設計、発振対策が困難。

    (6)発熱量が多くなり、パワーアンプの寿命が短くなる。故障する可能性も飛躍的に増大する。


■ 結 論
 以上のことからSPLコンテストなどのように、どうしても1台のアンプで大出力を得たいとき以外は、デメリットの多い使用方法と言えるでしょう。自分のシステムがどの程度のパワーを必要としているか把握し、4Ω接続で必要な音量が得られるようなら、無理に1Ω接続にはしないことです。もし、1Ωで使用するときは、ファンを取り付けるなどパワーアンプの温度上昇をできるだけ押さえる手段を取り、大出力での長時間使用は避けるようにしましょう。


ダンピングファクターとは(DF)
ダンピングファクターとは、負荷インピーダンス(スピーカーの公称インピーダンス)をパワーアンプの出力インピーダンスで割った数値を言います。通常はスピーカーの公称インピーダンスは決まっているので、数値が高いほど出力インピーダンスが低く、スピーカーの慣性を抑え込みやすく、ダンピングがよいと言うことになります。DFの数値は一般的な半導体パワーアンプの場合、数十から数百の範囲内にあり、真空管のアンプでは高くても数十程度となります。

ダンピングファクター(DF)=[スピーカーの公称インピーダンス(Ω)]÷[アンプの出力インピーダンス(Ω)+スピーカーケーブルなどの附加抵抗値(Ω)]

DFの数値が大きいほど スピーカーの逆起電力を吸収でき、コーン紙の動きを制動する能力が高くなります。単体スピーカーのコーン紙を指で軽く押してみると、入力端子間をオープンにした場合より入力端子間をショートさせた場合の方が、動きが硬くなり、コーン紙の動きが早く止まります。 これが、制動の効いた状態で、スピーカーの振動系の慣性を抑え込み、音の立ち上がりや立ち下がりが信号に忠実になります。

ダンピングファクターの大小は、パワーアンプのNFB(負帰還)などにより変化しますが、音質上の問題から、いたずらに大きな値にはできません。一般的にDFの高いアンプは歯切れのいい締まった低音、DFの低いアンプはユッタリとした低音再生音と言うことになります。
また細いスピーカーケーブルを長く引き伸ばす場合、スピーカーケーブルの抵抗分が0.5Ω程度にもなることがあり、DFの値が極端に落ち込んでしまうことがあるので注意が必要です。

(97/10/10)


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