パッシブ・クロスオーバーの構成部品とその特徴

■ 構成部品

パッシブ・クロスオーバーでの主な構成部品は次に示す様にその部品点数はごく少数ですが、使用する部品の銘柄、種類により音質が大きく変化するため、その選定にはある程度の経験とノウハウが必要になります。

  • コンデンサ
  • コイル
  • 固定抵抗
 
■ コンデンサ

コンデンサにはいろいろな種類がありますが、通常クロスオーバー用としてはフィルムコンデンサと電解コンデンサが使用されます。フィルムコンデンサは容量が比較的小さくてすむ、トゥイータとミッドレンジのクロス周波数で使用されることが多く、電解コンデンサは比較的大きな容量を必要とするミッドレンジとウーファのクロス周波数で使用されることが多い。ネットワーク用で現在入手可能な主なコンデンサを下記に列挙します。

フィルムコンデンサ
  • ASC ポリプロピレン
  • I.T. Electronic AUDIN CAP ポリプロピレン、 ドイツ製
  • SCR(Solen)ポリプロピレン、フランス製
  • 双信 V2A ポリカーボネイト
  • Hコン 三栄無線オリジナル
  • U CONポリプロピレン(フォステックスより販売)

電解コンデンサ

  • BLACK GATE BG-AC
  • I.T. Electronic Bipolar、 ドイツ製
  • 日ケミ AXF-BP

コンデンサの音色評価

コンデンサの音色は銘柄、種類によりそれぞれ特徴があり一概にはいえませんが、一般的に次のような特徴があります。

フィルムコンデンサ画像1
ポリポロピレン・フィルムコンデンサ
フィルムコンデンサ画像
各種フィルムコンデンサ
電解コンデンサ画像
電解コンデンサ


ポリエステル エネルギー損失 tanδ 0.4%〜0.9% ふっくらとした優しい音になり、硬くないので耳障りでなく、万人向き。
プリプロピレン エネルギー損失 tanδ 0.01%〜0.1% Hi−Fi用として良く使われるもので、透明度が高く分解能に優れる。
ポリカーボネイト エネルギー損失 tanδ 0.1%〜0.2% 電源の高周波バイパス回路などには良いが、透明度にやや欠ける。
ポリスチレン エネルギー損失 tanδ 0.01%〜0.05% コンデンサとしては理想的なもので、オーディオ用として最適であるが、一見おとなしくアッピールする面に欠ける。聴き込む程に良さが解かる。
マイカ エネルギー損失 tanδ 0.1%以下 理想的なコンデンサであるが、大容量が出来ない欠点がある。高域は良いが、低域では力強さに欠けるところがある。


■ コイル

コイルは大きく分けて空芯コイルコア入りコイルに分類されます。

  • 空芯コイル
    磁性体による磁気歪みが少なく音質的に有利ですが、大きなインダクタンスを得るためには大型化するため、通常は4mH以下の値を必要とするときに使用します。線材もOFC銅線や、LC-OFC銅線を使用したものがありますが、コイルの直流抵抗をなるべく小さくし、抵抗損失を減らすため、細い線材は避けφ1.0〜φ1.4程度の線材を使用すべきです。特殊なものとしては銅箔コイルがあり、銅箔をプラスティックフィルムではさんで巻いてあり、抵抗損失が小さいのが特徴です。
空芯コイル画像
空芯コイル
  • コア入りコイル
    磁性体をコアとしてコイルを巻くため磁気歪みは避けられませんが、比較的大きなインダクタンスが得られ、通常は4mH以上の値を必要とするときに使用します。コア材料には磁気飽和点が大きな材料が使用され、オリエントHI-Bカットコアなどが有名です。3種類程度のインダクタンスが選択できるタップ付きのものもあります。線材も空芯コイルの時と同様に細いものは避ける必要があります。形状は円筒形のもの、棒状のもの、トランス上のものがあります。

  • 使用上の注意
    コイルは電流が流れると磁束が発生するので、コイルを鉄のシャーシに取付けることは避ける必要があります。また2つのコイルを近接して取付ける必要がある場合は、お互いの磁束が影響しないよう、お互いを直行させます。
コア入りコイル画像
コア入りコイル
■ 固定抵抗

ごく一般的な炭素皮膜抵抗器や金属皮膜抵抗器の他、抵抗ネットワーク、角型チップ抵抗など使用目的により多種多様な抵抗がありますが、クロスオーバーで使用されるのは主にセメント抵抗器です。

  • セメント抵抗器
    抗体をセラミックのケースに入れて、セメントで固めたものの総称で、不燃性構造であり、放熱性、耐電圧性に優れるためクロスオーバーのアッテネータ−用或いはインピーダンス補正用として用いられ、通常は5W〜20W程度のものが使用されます。内部に使う抵抗体には、金属巻き線、金属酸化物皮膜などがありますが、金属巻き線抵抗が一般的で広く普及しています。
セメント抵抗画像
セメント抵抗(上より5W/10W/20W)
  • 巻き線抵抗器
    ラミックやガラスなどの芯の上に抵抗体の線をコイル上に巻き、その上に保護用の塗装を施したものです。抵抗線の種類、線径、長さで、抵抗値、定格電力を調整します。クロスオーバーで通常使用する値は抵抗値で数Ω〜数中Ω、定格電力で5W〜20W程度です。安定性と低ノイズが特徴ですが抵抗線をコイル上に巻いているため、高周波ではインダクタンス上昇のため周波数特性を持ちますが、クロスオーバーに使用する周波数帯域と低抵抗値(数Ω〜数中Ω)ではほとんど問題となりません。
  • 抵抗線がコイル上に巻いてあるため電流が流れると磁束が発生し、外部から誘導を受けます。この磁束の発生をキャンセルするように抵抗線を巻いたものが無誘導巻きタイプの抵抗で、価格は高くなりますがハイクオリティ・クロスオーバーにはよく採用されています。

巻き線抵抗画像
無誘導巻き線抵抗
  • メタル・クラッド抵抗器
    アルミなどの金属ケースの中に巻き線抵抗器などの抵抗体を入れ(Metal-Clad)、セメントで封入した抵抗器です。セメント抵抗器の一種ですが、外側の金属が放熱板となって放熱性に優れ、定格電力が大きいのが特徴です。また、取り付け用の穴があいており、直接筐体へ取り付けることが可能です。ディール社のものが有名です。
メタルクラッド抵抗画像
メタル・クラッド抵抗
参考文献:「トランジスター技術」、「無線と実験」など

(99/4/8)


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